物干に

物干に
月一痕の
夜半かな

碧梧桐

午前五時から勢いよく本二冊をオーダーしたら夕方には届く、この速度が東京。そしてインターネットも高速。国土が小さいからかな。一冊は岩波文庫の〈碧梧桐俳句集〉で、今は俳句を漁るのが少しばかりたのしいので碧梧桐も一瞥してみる。かれの詩をどう捉えるのかは以前から決めかねていたが、初期は好きだな。切れ味が良い時があるね。「つきいっこんのやはん」なんて疾走感があるし、「月一痕」は映像が浮かぶ。あきらかに秋の句だけどなんとなく気分でこれにしてみた。もう一冊はハルキの〈国境の南、太陽の西〉の英訳で、カリフォルニアで借りていた家に置いてあったから時々読んでいたら、続きが読みたくなった。日本語で読んだことがあると読み易いし、同じ物語の筋をほかの塊から取り出すような、また別の夢みたいな感覚があって。外国語ってそういうところがある。もやがかかっている。あそこはいい本が揃っていた。

小風景