二階より

二階より
塀の上行く
日傘見る

虚子

二階の窓から眺める風景はいつも興味深い。ここでは日射しの下、日傘が塀の上を移動していくという、おそらく顔は見えず、もしかしたら体も陰になっていて、日傘だけが滑っていくような。ぼくたちの日常では、時折、二階からはこういう奇妙なできごとを観察できる。時々、こういうことって起きている。忘れられないようで覚えてないことを書き留めているんだな、って思う。ところで日傘って女の人の用いるもので、詩の内で見る「日傘」には、女の人の気配がふくまれている。だから、ここでも陰になって見えないのは道を歩いている女だろう。二階の窓から女を眺めていた日。「砂日傘」という言葉もあって、これは砂浜に差してつかう。

@hellofukei

小風景