牡蠣のグラタン

水曜日もやっぱり〈ねんねぽよ〉という訳で、午前一〇時過ぎまで眠ってから二階に上がり、最小限の仕事をすませて初めて訪れる洋食屋さんへランチに出掛けた。洋食屋さんといっても内装も外装も建築家が設計したようにあたらしく綺麗なところで、一見、値も張るのかと予想していたけどメニューを見たら庶民的で、たとえば〈牡蠣とほうれんそうのグラタン〉のセットは一六〇〇円くらいだった。ポタージュとパンがついていた。そんなレストランで水曜日のお昼に隣の席から耳に入ってくるのは、夫も子もある婦人たちのおしゃべりです。それらは時々、とても不穏なことが語られているように聞こえる。僕がそこに居るのが似つかわしくないような気がしてくる。この感覚と、乳白色のグラタンの中にスプーンで寄せ集められたたくさんの牡蠣(じつにうれしいことにたくさん入っていた)を一つ一つ口に運んでいく、あの牡蠣らしい後ろめたさがとても合っていて、まあ、ひとことで言えばおいしかった。

小風景