上映会

ここのところのわが家は市川崑の上映会というわけで、夕べの〈悪魔の手毬唄〉では冒頭から「亀の湯」という白い湯の温泉に金田一耕助が浸かっていて「ほんとに秘湯温泉だ」とほっこりしました。あんな鄙びた湯屋はちくま文庫〈つげ義春の温泉〉の写真でしか見たことないよ。そういう失われたもの、懐かしい風景を求めて見ています。そんな時間があったら何かしら役立つような研究や勉強をしなくてはな、と思いながらもだらだら見ているけど、後から考えると他ならぬこの上映会がちゃんと研究になっていたりするから軽視できないものです。あと、こういう基礎教養をおさらいしてみるのは時に好い手になりやすいんじゃないでしょうか。不思議なものでその時にすっと入ってくる作品と入ってこないものがあるんだよな。古い映画を見ていると、たとえば三木のり平とか加藤武とか昔の役者さんが出ている。それは当たり前のことだけど、時間は流れるってことだから、生きていてどんな仕事をするかというボンヤリした問いが彼らの体に投影されているような感じがする。今はそんな見方をしている。

小風景