入梅晴や

入梅晴や
あつい天気に
とりかゝる

子規

おはよう。この詩はとくに何も描写していなくて、自然の風景がありありと立ち上がる、というものではないけど、僕はよくこういうこつこつと硬い言葉を並べた口語的な俳句に惹かれる。まるで散文の文章の一行のように読めて、靴音がする。草履というよりは洋靴で舗道を歩いている。「つゆばれ」の下で草木を見つけるわけでもなく「あつい天気」と一言で片づけて動きだす、ここにはもう、僕らの知っている東京のテンポがあるような気がする。僕がかれらの詩を見ていきたいのはそれもあって、東京というものが立ち上がっていく匂いが嗅ぎたい。より古いものに良いものはある。けれども、江戸時代より向こう側はもやがかかっている。外国語みたい。子規たちは、僕と同じ言葉を話している。東京のテンポで動きだした最初の言葉が知りたいのだ。

小風景