惜しみおきしがあらかた傷み棄てたるにしばらく桃の匂いのこれり
沖ななも
一日中、キッチンとベッドのあいだの数歩を往復して時々なにかを口に入れつつ、あとはぐったりしていた日。Netflixを見たりゲームをやったり洗い物をしたりしていた。心踊るようなことはなかったけど、これでいいと感じた。これ(この人生)いいな、これでいいと思うよ、みたいなことを自分に語り掛けているだけの、生産性のかけらもない時間であった。ありがちだけど世界史の出来事についてウィキペディアでちょっと調べたりした。短歌についても少しは考察しましたよ。というか、ふつうに沖ななもさんのファンになっている。ひとりごとっぽいのがいい。この〈桃の匂い〉の一首は、俳句にも詠めそうな着想じゃないでしょうか。季節感があるし、生活感もある。十七文字のバージョンに落とせそうなのがおもしろい。思ったのは、短歌のほうが扱える世界は大きく、広い。そのなかに、短歌でも俳句でも詩になる、かさなっている風景があって、これはそんな作り方のお手本になりそう。