静かさやあるかなきかの秋の波
虚子
荷造りをして、あす仕事でリリースする記事の手はずも整えたところで夜になった。昼食のころ、妻は不安になったのか(渡航するときはだれでも少しはなると思います)思いついたようにいつもの心療内科を急ぎで予約し、地下鉄に乗って千代田区へ向かった。薬を二ヶ月分よりも多目にだしてもらい戻ってきた。前日にそんな風に体が動くというのはいい兆候だと思うので、ぼくは心配していない。二十二時を過ぎて眠くなってきたところで冷蔵庫を開けると、いい具合にほとんど食材は残っていなかった。なにか夜食がたべたいと言うと、卵焼きと醤油で焼いたアスパラガスと添え物のハムが一皿に盛られてでてきた。朝食みたいな見た目だけどおいしい。長く家を開ける前の、置き去りにされずに済んだ食材たちのなかよく並んだあり合わせの一品に、なぜか涼しい風情があった。小さい秋みつけた。