これから晩ご飯で、またお風呂に入ろうかなと思うと先が長くてうれしい。たまにはこういうこと言ってみたい。ずっと川の音がしている。風が強くなってきてガラス戸ががたぴし鳴る。客室の広縁のテーブルに、なんとなく〈お茶〉の試し刷りを置いて眺めてみたら、古い温泉旅館によく似合っている。都会にいるときよりも馴染んでいる。よしよし。廊下には鉱物やはく製が飾ってある。作家や政治家の筆がいくつもある。こんな宿に逗留して毎日長い一日を過ごしたら、まとまった仕事ができるんだろうか、と思ったりもするけど、毎日少しずつ書いて、たまに本を作るのも悪くないじゃないか、と思ったりもするし、最近どうもあやふやだから、三つあるお風呂の、それぞれに入るたびに、ちがうことを思ったりする。これが愉しいのです。じゃ、そういうことだから。おやすみなさい。囲炉裏でたべるハーゲンダッツの抹茶もおいしかった。