お花見

旅行から帰ってくると、いつもの家がほっとするのと共に味気ないような気もする。改めてここが落ち着くな、と思う一方で退屈しそうな日常に引き戻されたような気持ちになる。そこで、ずっと旅行している気分で暮らせないだろうか、と考えるのは自然なことだと思う。去年の夏に福井へ行った後は、蔵のある新築の家が売りにでているのが気になっていた。冬がどんなに寒いのか知らないけれど、その冬に憧れたりしていた。それはこちらで暮らしている間に少しずつ消えていった。今回は、すっかり群馬が気に入ってしまい上越新幹線なら東京まですぐだ、なんて考えている。ラパンのような小さな車を手に入れて、峠をすいすいと温泉を巡ったり遥か遠くのスーパーまで買い出しに出掛けたい、と思っている。ずっと旅行している気分で暮らせたら、どんなお金持ちよりも贅沢かもしれない。

などと考えつつ、曳舟駅の近くを散歩していたら、スカイツリーを背景に桜吹雪の舞う公園があったから、急きょお弁当やお菓子を買ってきて束の間のお花見をした。隣でおじさんたちが昔の大衆劇場の話をしていたし、目の前で口喧嘩が始まったと思ったら、幼なじみが挨拶しているだけだった。今、福井や群馬に暮らしている人にとっては、こんな風景が旅のように特別だと感じるかもしれない。

小風景