家の時間

靴下デザイナーのやすろう君は、キッチンで仕事をしている。ぼくもキッチンワーカーになったから一日の過ごし方を聞いてみたけど、あんまり具体的なイメージは湧かなかった。ちゃんと椅子に座ってお仕事しているそうです。「なんの?」って思わず聞いちゃったけど、「いや、靴下のデザインです」という当たり前の答えが返ってきた。

まあ、そうだよね。家の時間のなかに仕事の時間があって、すっと分かれたり溶けあったりするような過ごし方だろうか。かれの家の室内風景を見れば、それがいい感じに調和しているように思えたけど、キッチンワーカーはいつもユニークなやり方をこしらえるものだから、人に聞いてみないと「こんなものかな」というふつうの感じが分からない。

あやのさんも「夫がずっと家にいて仕事をしているお友達はあんまりいないから」と言っていた。二人の王国では主にYouTubeとHuluが観られているようだった。我が家ではちがっていて、Netflixとサイバーエージェントのインターネット放送局をよく視聴している。それを二組の夫婦で話し合っているのが、なんかおかしかった。

昔のテレビ局の時もこんな感じだったのかもしれない。「お宅はどちらのチャンネルをよくご覧になりますの?」みたいな…。テレビには深い森が映っていて、鳥のさえずりが流れていた。キッチンの壁に虎の紙細工の明かりが灯っていた。やすろう君は何回かレコードを取り替えた。あやのさんはルーフバルコニーで花を育てているとのことだった。

小風景