ブリュッセルから

日々こつこつやっている不動産メディアの仕事のパートナーはヨーロッパに長期滞在していて、もう三ヶ月は経つだろうか。彼のために時差を考慮して毎週水曜日のミーティングは夕方に改められ、ハングアウトの冒頭の挨拶ではロンドンにいたり、ケルンにいたり、それが先々週にはパリになった気がしていたが、前回はベルギーのブリュッセルという(彼の言うには)小さな街からだった。ふと、自由でいいなあ、と思う。僕たちはもうこの形が自然になり、馴れていて余り旅先のことを聞いたりはしないんだけど、このときは「羨ましいな」と思った。僕も昔、パリからアムステルダムに電車で行く途中で通り過ぎた。車窓から眺めただけだけど、暗く沈んでいるような美しいところだった。行ってみたいなあ、と思う。それにしても「自由だから羨ましい」というのは羨ましさの内でも「涼しい羨ましさ」というか、胸は苦しくないし焚き付けられるようなものでもない。むしろ自分も自由なんだと気付かされるような羨ましさで、取りもなおさずだれでも持っている物を捨ててしまえば自由だろう。それは、すぐ隣にある。どこにいてもある。なんとなく、彼はわざわざ遠くまで行ってそれを証明する為に遊んでいるようなところがある。そういえば雇い主であるところのCEOはCEOで、その働き方に難色を示すどころか最初に渡航するチケットをプレゼントするという、どっちが遊んでいるのか分からない感じで、冗談で言ったことに対してもっと大きい冗談が返ってくるような感じで、結果、ふつうに遠距離のミーティングになっている。一体どうなってるんだ。

小風景