女あり

女あり
物干台に
涼ぬすむ

汀女

女あり。涼ぬすむ。あやしい感じがするけど、この女って自分のことを詠んでるんじゃないかと思った。こっそり夜の物干台で一人を満喫している。下のお茶の間ではにぎやかで、隣家からも音や声がするけれど、ここにいると静かで、疎外されていて、自由だと感じる。いそがしい家の時間から束の間、姿を消し、私だけの夕涼みを盗んだ、だれにも知られず。そんなささやかな犯行の味わいがあるんじゃないでしょうか。家の中にもこういう時間って潜んでいるし、たとえば友人と食事していてトイレに立ったり、別の部屋へ物を取りに行ったりすると、そこでは我に返ったように静まり返っている、ということってありますね。あの、私だけの居場所。きのう、昭和の女流俳人、中村汀女のいい本を手に入れたから。女流っていう響きが昭和っぽい。

@hellofukei

小風景