美しき苺

美しき苺を洗ひし水も夜の溝をひそひそまはりゐるべし

中城ふみ子

今夜はこの一首が目に留まりました。
キッチンの洗い場の銀色が目に浮かびました。夜に苺を洗った水が回りながら溝へ吸いこまれていくところ。こういう写生の歌もあるんだな、でも俳句のそれがカメラのシャッターに似ているとしたら短歌の写生はもっとゆっくりで時間を感じる。それもこの一首では、スローモーションみたいだ。ほんとに排水口の回りを水流が一巡するところが見えた。たとえば「美しき」とか「夜の溝」とか「ひそひそ」なんて俳句だったらばさばさと刈っていくであろう言葉がここには居られるんだと思う。つまり短歌の冗長性。一つの風景を表すのに一まわり遠い経路を選んでみるのも短歌っぽさかな。(こういうことってたぶん、入門書を一冊読めば書いてあるだろうけど、私は私の受けた印象を自分の言葉で噛みくだいていきたいのでここに記す、、)

@hellofukei

小風景