空気が冬らしい解像度で、冬らしい乾いた水槽の底にいるような気分をともすると忘れそうになるこの頃ですが、今日は京成に揺られて荒川、江戸川と大きな河を渡るときにそれが想い出されて良かった。
地平にオレンジと紫の線がきれいに引かれていて、雲の下に低層の町並みがへばりつくようにあるのが乾いたハングリー精神を表しているようで良かった。思うに、職人はこうでなくちゃいけない。
貧しくなくてはいけない。いつも苛立ちを抱えていなくてはいけない。こういう当たり前の規律を振り返ってみれば、ソーシャルメディアで褒めそやされることなど無意味だと分かるだろう。
なんて、力を込めて言いたくなるのは、久しぶりに会った〈アポテーケフレグランス〉の圭太さんがいつにもまして職人然としていたからで、本当に香料のことしか頭にないようで心配になる程だった。
というか、聞くところによると最近かれのアトリエに国民的な女優さん(だれでも知ってる女優さん)が訪ねて来たらしいのだが、当然のようにそのことには一言もふれないでいるのがおもしろかった。
正直、どんな人なのか聞いてみたかった気もするけど、女優の名前よりは調香の原料が多くを占めるようだった。なんていうか、配達を間近に控えたサンタクロースって、案外厳しいのかもしれない。