帽子がない

わたしはかねがね、わたしに帽子は似合わないと思ってきた。いや、形によっては似合うと思ってきた。けれども、野球帽は似合わないと二〇年も信じて疑わなかった。そうして月日が流れた。

ところが、いつかの原宿の展示会で妻が注文したコーデュロイの帽子が忘れたころに届いたのをかぶってみたら、おかしなことに似合う気がしてきた。この品はピンクで、野球帽の形をしている。

うれしくなって、得意になってピンクの帽子をかぶってお出掛けしていたんだけど、わたしが注文した物じゃないので、悪いような気がしてきた。それに、なんかもう一色くらい欲しくなってきた。

かねがね、わたしに野球帽は似合わないと思っていたから見過ごしていたのだが、ちょうど太郎くんもコーデュロイの野球帽を作っていて、わたしが欲しいと思ったときには、白だけが残っていた。

白は申し分ない。とてもいい。ピンクと白の帽子を持っているのは悪くない。よし、今日ポチッとするぞ、今日だぞ、と、わくわくしながら一週間くらい経って、けさ見たら売り切れてました。あーん。

でも、なんかほっとした気持ち。

小風景