久しぶりに電車でサンフランシスコ市街へお出掛けしてみた。いろいろあって咀嚼するのに時間がかかる。夜眠りにつくと外国語の聞こえる夢を見る。おかしなもので昼間、無意識に耳にした言葉や自分にも言えそうな(けれども文節の不明瞭な)フレーズが渦巻いている。もっとこんな夢を見たいよ。その日に言えたことや言えなかったことが、そこで繰り返されている気がする。風土や風習などあたらしい発見はいくつもあるが、ぼくにとってなにより惹かれるのはあたらしい言葉だ。それも本を読むんじゃなくて人と話すのが新鮮だ。そんなことって東京ではもうないから。辞書の知識と反射神経が組み合わさったゲームか運動みたい。なにも聞き取れず、なにも言い返せないことも好きになった。その分、また夢を見るような気がする。〈The Mission〉は本屋さんや洋服屋さんが立ち並ぶ古い通りと交差してこの街らしい勾配に美しい邸宅がいくつも目につく歩きやすい区域だった。行き帰りの鉄道も少し乗り方が分かってきたかもしれない。列に並び、列車に乗り込んだら適切な席を選び、周囲に気を配りながら静かにする。それだけの緊張感。