緑色の帽子を被り、アー・ペー・セーの重たいメルトンのコートを着てお散歩を開始したら、気分がよかった。ぺたぺたのスリップオンの靴にすこし問題があるけど…。京成電鉄で荒川を渡り、東京と千葉のあいだをうろつく。電車は空いている。背広のおじさんはくつろいでいる。
冬の日のある時間帯、あるエリアの電車の車内には、とてもくつろいでいる背広のおじさんが点々と座っている。それは思わず頬がゆるむ風景である。私の頬というよりは、その場の空気の頬がゆるんでいる感じで、どこであろうと、ゆるんだ方角、ゆるんだ目的地へ向かっている。
ゆるんだ目的地ってなによ?といわれても困るのですが、たぶん目的地としてゆるいんだと思います。大切な決断、会社の未来がかかっている会議とかは、待っていない場所だと思うよ。だからあんなにくつろいでいるんだよね。たぶん、判断することといえば、お昼ごはんくらい。
レバニラ定食か、かき揚げそばか、みたいな。これって好きだな。ゆるんだ方角へ行けば行くほど、ゆるんだ判断が待ち受けてるってことでしょ。「もう、それどっちでもいいじゃん」みたいな問いしか存在しない場所に向かって、僕たちは走りつづける…。なんかかっこいい。
そういうことですから(どういうこと?)私は今、東向島珈琲店に戻ってきて、ハートランドビールを飲みながら〈ハルちゃん〉の開店を待っています。ロンドンから久しぶりに東京を訪れたという、黒眼鏡の女性が語っている…。いいな、にぎやかで。そろそろ会計をしようかな。