家のはなし

(つづき)また、お風呂には昭和レトロな花柄の入ったタイルが貼られている。浴槽は銀色のよく温まるやつ。今の感性なら許容できるだろうというラインで残しつつ、シャワーヘッドは新品に取り替えてあり、モダンなコントロールパネルがついていて追い炊きもできる。この辺はにくいくらいに線引きが分かっている仕事といえる。

トイレは小さい。洗濯機置き場はカーペットの敷かれた和室の戸の内にあるが、これは暮らしてみるとじつは使いやすい。今の洗濯乾燥機は静かだから、閉めてしまえば眠っている間にほかほかです。

階段も個人的にはキッチンと同じくらいのチャームポイントだと思っている。なぜなら本当にそのままだからだ。なにもさわっていないのがすばらしい。半年暮らしていてもそう感じる。築四〇年の木造戸建の階段がそこにある。最初の日から磨り減っていて、傷だらけ。それがいい。

二階はたまに来てくれるお客にいわれて気が付いたんだけど、天井がやや高い。一〇帖余りの白く細長い一間になっている。ここの床もちょっとおかしくて、正方形のラワン材(ベニヤ板)が張られている。表面に何も塗らない木の床というのは流行りだと思うけど、うちは四角いぺらぺらの板。かわいいし、なんか笑ってしまう…。

傷つきやすいし、チープといってしまっていい気がするけど、一目の印象としてはなぜか「知る人ぞ知るギャラリー」みたいに見える。これも内装屋さんの勝利ということになるだろう。たぶん、「知る人ぞ知るギャラリー」はお金がないだろうから、同じになるのかも…?

なんて、好き勝手に書いていますが、このフロアも絶妙なバランスでクローゼットが二箇所あり、容量は十分である。なぜここまでぴったりと作れたのか、たぶん、設計者の頭が柔らかいことはたしか。

ふわふわなのです。南向きだし、ゲットーっぽい原っぱに面して日当たりはふつうにいいし、僅かにスカイツリーも見える。それと、サッシが金色だから謎のとくべつ感があるかも。偶然が重なっただけだと思うけど…。この、内装屋さんのページに写真がありますから、見てみてはいかが?(つづく)

東向島の家

小風景