儀式

机に向かい、香料を一二滴垂らしたオイルバーナーに火を点ける。これを執筆の儀式にしよう。なにをするにもスイッチを入れることは不可欠だろう。そこで、鼻に作用する。いつも目にたよりすぎだから、匂いから動物らしく振る舞うのはどうだろう。それで…きょうは冷たく沈んだ冬らしい日だった。だから午前中の記憶は、ほとんどない。

午後一時半から三〇分、プールで泳いだ。もうクラブを替えたいような気がしているけど、乗り換えるコストよりも慣れた方がいいと言い聞かせながら水中で過ごした。なにを考えていようが、体が動いていればいいのです。ぼうっとしたまま家に戻ってみると〈足湯の時間〉は終わりに近かった。お湯に垂らしたローズマリーが鼻をついた。

サラダチキンのかけらと納豆をたべたらおいしかった。そのあとしばらくの記憶もないけど…(プールとローズマリーとサラダキチンしか覚えてない)たしか、だれかからリンゴが一箱届いたと思う。つやつやしていてうれしかった。半分をたべて、半分はタタンとジャムにしましょう、と言っていた。ぼくは言われるままに賛成した。

それが、四時頃だろうか。なにしろずっと冷たいし鉛色なので起伏というものが微かにしか感じられない。次はなんだっけ。そうだ、三陸産のワカメだ。夕食の買い物のワカメの賞味期限が切れていた。みんながうっかりしていた。店に電話をしたら優しい声で、取り替えるか払い戻しか選んでほしい、と言っていた。ごめんなさい、とのことだった。

小風景