ナンセンス・カタログ

三年くらい前、阿部さんの展示へ行ったら、「写真と本」の展示だった。彼の撮った写真と好きな本が並べられていた。山田太一が何冊かあった気がしますが、そのとき入り口近くに和田誠と谷川俊太郎の〈ナンセンス・カタログ〉があって「ほう」と思ったのです。

この本はとてもいいと思うのです。ぼくは現代詩はよく分からないけれど、この本を読んで「谷川俊太郎っていいな」とはじめて思った。阿部さんは「いちばん好きな本かもしれないです」と言っていた。

たとえば「黄色」というページがあり、「黄色はちょっとずるい感じがする」なんて書いてある。そこに黄色を表すような絵(?)がシンプルな線で描かれている。文章と絵はつかずはなれずで、お題となる言葉の周りに漂っている微妙な感覚を捕らえようとしたり、してなかったり。

ぼくはどうも自分で本を作ってみようとすると、文章と絵・写真、という形に落ち着くようだ。なんか気軽な感じがいい。そうすると、一つの理想の形として、〈ナンセンス・カタログ〉が思い出される。とくにめざしてないけど、いいよなあと思う。

そのことをお耳に入れておきたいと思って。

小風景