移住について

家賃が高いし、(一日中家にいるし)東京や近郊に住まなくていいな、と思ったときに、どこを選ぶか、というのはおもしろい問題だとずっと考えていた。どこでもいいから移住したいという話だと、選べなくなってしまう。そりゃ、どこにでも移住できると思うし、無数の土地がある。それでも、何か取っ掛かりがいるんだよな、と思う。だから、たいていの場合、血縁だったり、地縁だったり、になるんじゃないかな、と考えていた。たとえば、自分は住んだことはないが、先祖が住んでいたとか、友人が住んでいるとか。或いは、ストーリーも重視されるだろう。移住地として有名だったり、雑誌によく紹介されているというのもあるだろうし、尊敬している作家が一時暮らしていたとか、今暮らしているとか。なんとなくここが来るんじゃないか、という流行もあるはずだ。勿論、望ましいのは、出来るだけ私的なストーリーに沿って選択することだと思う。だれも移り住まないが、ここだけは自分の土地なんだ、と信じられるところなら一番いい。だれも見向きもしないけれど、自分にとっては価値が高い場所。そういう場所を見つけられた人が、この世の中、幸せになれる気がする。なんてことを、〈アポテーケ・フレグランス〉の新工場を見学に行って改めて思いました。すごいところだったな…。

小風景