デザイナーと僕

健康クラブの入り口まで行くと「きょうは水道がこわれてしまいトイレとシャワーが使えない」とのことだった。それでもプールはいつものように使えるとのことだった。トイレに行きたかったので、向かいにあるスーパーマーケットで用を足してから戻り、一時間くらい水の中で過ごしてから着替えてコートを羽織りチェックアウトしようとすると、杖をついたおばさんが猛烈に怒っていた。「遠いところを歩いて来たのにシャワーが使えないなんて」という主旨で、たしかに杖でここまで来た人は憤慨するだろうな、と思った。「あなたじゃ話にならないから」と聞いたことあるような台詞を口にしていた。なんというか、これが今日の僕の世間。

それから、母さんと父さんが暮らしているマンションまで歩いていき、父さんは入れちがいで外の仕事へ出掛けたが、母さんは卵の入った粥をだしてくれた。プールのあとに食べる粥はうまい。いつものように衛星放送のドラマが流れていたが、何話見ていてもちっとも筋が理解できない海外のミステリー物だった。「同性愛者」とか「女の首に注射した」とか、そんな台詞が耳に入ってきたんだけど。僕がそうやって何時間も過ごしていたのは暇だからじゃない、仕事は早起きしてちゃんとやっておいたのである。後から起きてくる妻に集中して二階を使ってもらえるよう、ふんわり間を開けておいた、というのがほんとのところで、頃合いをみて帰った。

水曜日なので夕方からのハングアウトを終えた後が制作の時間である。これから詰めていく段階なので密度が高い。ようやくこの時間帯になったという感じ。これが味わいたくてやっている。椅子を動かして、Macに向かうのんさんの背後に座ったんだけど、そういえば、もう二〇年も前からここが僕の定位置かもしれない、と思った。デザイナーの近くに腰掛けて一緒に画面を眺めている。なぜかこの光景が巡ってくる。僕のところに廻ってくる。ここでうんうん唸っている状況が訪れたら終わりは近い。じつを言うと、終わって欲しくない感覚も少しあるんだけど・・(本当は〈お茶〉も終わって欲しくないとずっと思っているはずだ)今が愉しいときかな。

小風景