日本映画

夕食のミートボールの残りを明日スパゲティにしよう、と話しながら眠り、起きてすぐに食べたくなり作ってもらった。それはおいしかった。ピーマンが添えられていた。ヨーグルトも飲んだ。それからまた眠くなり昼寝(といっても午前一〇時くらい)しようと横になって市川崑の古い映画を見始めた。それはちょうどよかった。暗いし、流しておくのに心地いい音が聞こえた。バブルになる前の高度成長期の日本映画はどこか陰鬱で、寂しさや劣等感みたいなものがある。今日はそれがよかった。映っているのは山や森や湖といった古来の景色や、大広間のある伝統工法の屋敷、貧しい通りや食堂、町に数少ない黒電話といった物たちで、まるで秘湯の温泉へ旅行しているような気分になる。こういう映画から血縁の呪いや祖父の遺産といったおどろおどろしいフィルターをはずしてみれば、けっこう今眺めていたいものが映っていると思った。田舎の風景を暗いものとして見ていたのが、明るく捉えられるようになったのが、現代の変わり様かもしれない。

小風景