Housing 3

日々の一つ一つが大冒険すぎていよいよ混乱していますが、昨日はいつも写真を送ってくれる阿部健さんが展示のためにサンフランシスコにいるということで、さらによく分からなくなった。そのギャラリーの周辺がまた、あの街特有の目がうつろで呆然としている人たちが少なからずいる場所だったので、都会慣れしていないぼくは緊張しながら足早に歩きました。慣れてない訳じゃないけど、ほんとに街角に見たことのない固まり方してる人たちがいるの。それについて阿部さんに話してみたら「たしかにどうやったらああなるんでしょうね、ぼくも不思議で」と仰っていたので、よかった、と思った。話し始めたらいつもと同じというか、阿部さんがいる、というだけだった。一緒に展示をしているアメリカの写真家の恋人と話していて、「長期旅行中の友人の家に滞在しています」と言ったら「それがいちばんいい」と答えていたのがいい材料になった。彼女はイランの人だけどバンクーバーに家があり今は西海岸に住んでいるそうだから、旅行と家さがしの事情に通じていそうな人の話を聞けたのがよかった。日々の一つ一つが大冒険すぎて全然帰りたくならないから、これから家をどうしたらいいのか考えていたから。小一時間くらい都会にいて近くの酒屋で買ったビールを皆と飲んでいたら(そういう雰囲気が好きだから)段々と高揚してきて派手に遊びまわりたくなったけど、妻が見切りをつけて手際良くバートの駅まで連れて行かれました。あれ、あのままいたら朝にはぼくも街角でうつろな目で固まってたかも。夜の時刻表ではオークランドで乗り換えなくちゃいけなくて、一〇分ほど青い夕暮れの空の下で待っているあいだ、隣にいたアフロ・アメリカンの人が神妙な顔つきでカニエの新作を聴いていた。

小風景