夏休み

夏休みの書生に逢ひぬ瀬戸の船

子規

さっきから「なにか書いたら寝よう」と思いつつそのまま止まっている。どうも、この句の風景は完璧すぎる。概念としての夏に再生される物語のひとこまで、人物も道具立ても私としては始まってほしい物語の一つの理想に近い。女の人と宿命的に出逢うよりは「夏休みの書生」さんくらいが楽でよい。それでいてかれは若いから悩んでいるだろうし、都会から戻ってきたのかもしれないなあ。山荘ももちろんすばらしいが「瀬戸の船」の甘美さには抗いがたい。舟で乗り合わせた人と知り合うなんて、くらくらするような出来事が世界のどこかではじっさいに起きているんだろうなあ。余りにも遠い。遠すぎて呆然としてしまい、しげしげと文字を眺めることしかできなかった。俳句として出色の出来というよりは、内包している風景へのあこがれで現実を忘れそうになった。でも、おかげで四秒くらいこの場所へ行けてよかった。

ところで、ようやく「目次」ができました。

小風景が遡りやすくなりました。

小風景

小風景