冷奴のぞみといへど何やある
汀女
べたべたしてこの世の終わりみたいな天気。すっきりしない。それでいて今日いやな日だったかというと、そんなこと全然ない。好きなように暮らしていた。妻は一日中パジャマで、シャワーも浴びたがらなかったが、夕方には徐々に調子がでてきたようだった。昼すぎに起きだして口に入れたのはチョコレートを齧るくらいだったけど、夕食には茄子とズッキーニを勢いよく盛ったトマトスパゲティを作ってみせた。バタートーストも焼いたし、自家製のコーヒーゼリーを生産した。ぱっと閃いた料理や即席の小芝居でたのしませてくれました。ただ、台風のせいか空気がべたべたしていただけ。それだけで、いやな気分になるのはごめんだから、ちゃんといいことが揃っているのを確認する。なにも欠けていないし、欲しくもない。これが〈のぞみといへど何やある〉精神です。ひややっこだけあればいいってね。こういう日は、思い切って、冷房の設定温度を一度下げてもいいな。ちょっとした贅沢で反撃。
