Belmont Ave.

きのうの夜は東京のいいところについて話し合っていたら二時になってしまった。夜更かししても早くに目が覚めるというわけで、九時くらいにはキッチンの洗い物をしたり、三つある鉢植えを外に出して日に当てたりしていた。(人の家の植物の世話をするのはおもしろい、そういえばジャン=フィリップ・トゥーサンの小説で留守中の隣人の植木の世話をするくだりがあった気がする、合鍵を渡されていて時々水を遣るんだけど、なんかどきどきした。あとぼくらも東京に枝の長い多肉の鉢を置き去りにしてきている。三〇日くらいなら平気だと思うけれど、そろそろ水をくれてもいいよ、と大人しく待っているだろうな)ビールの瓶をすてるのにお隣の窓の前を通り過ぎたらキッチンに面していて、食器と水の音が聞こえた。それから戻ってきてソファでぼうっとしていたら、その家から赤毛の髭を生やしたおじさんがでてくるのが見えた。緑のシャツのお腹がふくらんでいた。あの人が〈ゴーウォーリアーズ〉なんだな。がしゃんと同じく瓶の落ちる音が響いたから、ぼくが捨てに行くのを見ていて自分も捨てようと思ったはず。一日を立ち上げていこうと思いつつ、頭が休まっていないようで何も思い浮かばず、コンピューターは開かないでおこうと考えつつ辞書を引きたくなることがあり(あれは可算名詞なのか不可算名詞なのか、前置詞はなにがいいものか…また次に彼らに会った時に話したいことをあらかじめ考え先回りして言い方を調べておく)冷蔵庫に食料が残らないようまだ飲みきっていないチョコレートミルク等々を口にしながらなにかをタイプしているだけで、あっというまに何時間も過ぎてしまった。

小風景